【留学のプロが教える】世界の宗教マナーと文化背景の話

日本で暮らしていると、宗教について深く考える機会はあまりないですよね。クリスマスや初詣、仏教の法事など行事には参加しますが、「信仰」として意識することは少ないでしょう。
しかし、いざ海外に留学すると、宗教は現地の人々の生活に深く関わっていることに驚く場面がたくさんあります。
「なんとなく」差し出した握手を相手が拒んだり、一緒に食べようとした料理がタブーだったり…。悪気はなくても、知らないことで相手を不快にさせてしまうこともあるのです。
この記事では、世界の代表的な宗教と、その文化的な特徴やマナーについてわかりやすく解説します。宗教を知れば、現地の人との距離が縮まり留学生活がもっと豊かになりますよ。
※本記事で紹介している内容は、あくまでも一例です。実際の地域や宗派、その国の文化によって細かい違いがありますのでご了承ください。
宗教理解が留学準備に欠かせない理由

海外での生活では、「宗教」がその国の文化や生活に深く関わっていることが多くあります。
どんな食べ物を食べるか、どんな服を着るか、どんなあいさつをするかなど、日常のちょっとしたことにも宗教のルールが関係していることがあるのです。
宗教について少しでも知っておくことが、留学前の大事な準備になります。
毎日の行動に宗教の影響がある
食事の内容、あいさつの仕方、服の選び方、休む曜日などに、宗教のルールが関係していることがあります。
知らないまま行動すると失礼になることもある
たとえば、豚肉を食べない人にうっかりすすめてしまったり、握手をしてはいけない相手に手を差し出してしまったり…。宗教を知らないことで、気づかないうちに相手を傷つけてしまうこともあります。
相手の文化を理解しようとする気持ちが信頼につながる
「この人は自分たちの文化をわかろうとしてくれている」と思ってもらえるだけで、良い関係が築きやすくなります。相手を理解して、尊重する気持ちが一番大切です。
トラブルを避けて安心して暮らせる
宗教的な決まりを少しでも知っていれば、ホームステイや食事の場面などで困ることが減ります。
その国の人たちの考え方がわかるようになる
宗教について学ぶことで、その国の人が大事にしていることや、ものの見方が見えてきます。
「よかれと思ってやったこと」が、相手を不快にさせてしまうこともあるのが異文化のむずかしいところです。
知っていれば避けられることもたくさんあります。宗教を知ることは、安心して、楽しく留学生活を送るための大切な準備のひとつです。
世界の主要な宗教とその特徴

国や地域には、それぞれの文化や歴史と深く関わった宗教があります。
ここでは、留学先で出会うことの多い代表的な宗教について、基本的な考え方や生活とのつながりを紹介します。
キリスト教:世界で一番信者が多い宗教

キリスト教は世界で一番多くの人に信じられている宗教です。アメリカ、ヨーロッパ、中南米などで多くの人が信仰しています。
キリスト教で大切にされていること
キリスト教の考え方は、「イエス・キリスト」という人物の教えに基づいています。イエスは人々に「愛」と「ゆるし」の大切さを伝えた人物として知られていて、信者にとって大切な存在です。
聖書と曜日
キリスト教では、聖書をとても大切にしています。聖書はイエスが生まれる前の物語を記した旧約聖書と、イエスの生き方や弟子たちの教えなどが記された新約聖書の2つに分かれています。
日曜日は神様にお祈りをする大切な日です。多くの人が教会に行って礼拝をし、お店や学校が休みになる地域もあります。
宗派のちがい
キリスト教には、大きく分けて3つのグループ(宗派)があります。どれも同じ神様を信じていますが、少しずつ考え方や習慣が違います。
- カトリック
ローマ法王(ローマ教皇)を頂点とする組織で、長い歴史と伝統を重んじているのが特徴です。世界中に広く信者がいます。 - プロテスタント
「聖書こそが一番大事」という考えを持っていて、いろいろなスタイルの教会があります。アメリカやイギリスに多く見られます。 - 正教会(せいきょうかい)
東ヨーロッパやロシアなどに多く、礼拝のときに使われる建物や飾りがとても美しくて、芸術的な雰囲気があります。
イスラム教:毎日のくらしと信仰がつながっている宗教

イスラム教は、中東や北アフリカ、インドネシアなどで多く信じられている宗教です。世界ではキリスト教の次に信者が多い宗教です。
イスラム教で大切にされていること
イスラム教の教えは、「アッラー」という唯一の神様を信じ、神様の言葉を伝えた「ムハンマド」という人物を大切にしています。ムスリム(イスラム教徒)たちにとって、毎日の生活の中で神様の教えを守って生きることはとても大切です。
留学先によっては、学内に礼拝室(ムスッラー)があることもあります。 アメリカやカナダ、イギリス、オーストラリアなど多様な宗教が共存する国では、イスラム教徒を含む学生が安心して祈れるよう「Prayer Room」や「Multifaith Room」が用意されている大学も多くあります。
大切なルール「五つの柱」
イスラム教には、信者が守るべき「五つの柱」と呼ばれる行いがあります。
- 信仰告白(シャハーダ)…神様を信じること
- 礼拝…一日5回のお祈り(メッカの方向を向いて行う)
- 喜捨(ザカート)…困っている人に寄付すること
- 断食(ラマダーン)…ラマダンという月に、日が出ている間は食べない
- 巡礼(ハッジ)…一生に一度はメッカに行く
食事やあいさつのルール
- 豚肉やアルコールは禁止
- 女性は肌や髪を隠す服装(ヒジャブ・アバヤなど)を着ることが多い
- 異性との握手やハグはしないのが一般的
- 物の受け渡しは右手で行うのがマナー
ヒンドゥー教:たくさんの神様がいる、インドの宗教

ヒンドゥー教は、インドやネパールなどで多くの人が信じている宗教です。インド文化と深いつながりがあります。
ヒンドゥー教で大切にされていること
ヒンドゥー教はたくさんの神さまを信じている多神教です。
神さまによって役割が決まっていて、有名なのは次の3つです。
- ブラフマー:世界をつくる創造神
- ヴィシュヌ:世界を守る維持神
- シヴァ:世界をこわして新しくする破壊神
「生まれ変わり」や「前世の行いが今に影響する」といった考え方もあります。
生活の特徴
- 牛は神聖な動物とされているため、牛肉は食べない
- ベジタリアン(野菜中心の食事)の人が多い
- テンプル(寺院)で礼拝をしたりお供えをする
仏教:心を落ち着けて、生き方を学ぶ宗教

仏教は、中国・日本・韓国・タイ・スリランカなどで信じられている宗教です。日本でもお寺や仏壇など、身近なところで見かけることが多いですね。
仏教で大切にされていること
仏教は、「ブッダ(お釈迦さま)」という人の教えがもとになっています。ブッダは「人はなぜ苦しむのか?どうしたら心が楽になるのか?」を考え抜いた人で、その教えが今も多くの人に受けつがれています。
大切にしている考え方
縁起(えんぎ):この世のすべてのものは、たくさんの原因や条件が重なって生まれたり変わったりしているという考え方。
無常(むじょう):すべてのものは変わり続けていて、ずっと同じでいるものはないということ。
八正道(はっしょうどう):正しい考え方や行動など、8つの道を実践することで、心が安らかになるという教え。
四諦(したい):
①人生には苦しみがある
②その原因がある
③原因をなくせば苦しみもなくなる
④そのための方法(八正道)がある、という4つの真理。
国によってちがうスタイル
- 「大乗仏教」日本や中国:多くの人の救済を目指す
- 「上座部仏教」タイやスリランカ:修行によって自分を高めることが中心
文化的な側面
- 瞑想や座禅:心を落ち着けて自分と向き合う時間
- 精進料理:肉や魚を使わない体にも心にもやさしい食事
- 仏教の行事:お盆やお彼岸、ヴェーサカ(ブッダの誕生日など)
ユダヤ教:民族と深く結びついた伝統的な宗教

ユダヤ教は、イスラエルやアメリカを中心に信じられている宗教です。世界の中でもとても長い歴史を持つ宗教で、民族のアイデンティティとも深く関わっています。
ユダヤ教で大切にされていること
ユダヤ教では、「トーラー」という神様からの教えをとても大事にしています。安息日(シャバット)という特別な日には、家族でゆっくり過ごし、仕事や買い物などは控えます。
食べ物の厳しいルール
- 「コーシャ」と呼ばれる食事のルールがある
例)豚肉・貝類はNG、肉と乳製品を同時に食べないなど - 「コーシャマーク」がついた食品も多く販売されている
宗教と一体化した生活
ユダヤ教は、宗教であると同時に、文化であり、家族の絆でもあると言われています。行事や食事、教育など、生活のあらゆる場面に宗教の考え方が取り入れられています。
このように、それぞれの宗教には大切にしている考え方や習慣があることがわかりますね。留学先で出会う友だちのことを知るためにも、こうした基本を押さえておくと安心です。
食事・服装・ジェスチャーで気をつけるべき宗教マナー

宗教的な価値観やマナーを知らないまま行動すると、相手にとっては無意識のうちに失礼なことをしてしまうこともあります。関わる人の宗教を尊重し、理解に努めることが大切です。
宗教による食事制限に配慮する
宗教によって「食べられないもの」や「食べるタイミング」に制限があります。
宗教 | 主な食事の制限 |
---|---|
イスラム教 | 豚肉・アルコール禁止。ラマダン中は日中断食。 |
ユダヤ教 | 豚・貝類禁止。肉と乳製品を同時に食べない。 |
ヒンドゥー教 | 牛肉禁止。ベジタリアンが多い。 |
キリスト教 | 宗派により制限あり。レント期間中の肉断ちなど。 |
同じ宗教でもどこまで厳しく守るかは人によって違います。
友人に料理をふるまう際や外食時に「これは食べても大丈夫かな?」と迷ったときは、本人に確認するのが一番確実です。「食べられないものある?」と聞くだけでも、相手への配慮が伝わります。
服装やジェスチャーにも気をつける
普段なにげなくしているしぐさや服装も、宗教的にはNGとされることがあります。
【服装】
- 肌の露出は控えるのが基本
宗教施設では、女性は長袖・ロングスカート、スカーフで髪を覆うなどの服装が求められることがあります。男性も短パン・ノースリーブはNGな場合があります。
【ジェスチャー】
- 異性との握手・ハグはNGなことも(特にイスラム教・ヒンドゥー教):初対面では相手の反応を見てからがベターです。
- 左手は使わないのがマナー(イスラム教では左手は不浄とされます)
- 頭に触れるのはNG(仏教文化圏では、頭は神聖な場所)
- 人差し指で人や物を指すのは避ける(イスラム教圏など)
- ピースサインやOKサインにも注意が必要:裏ピースはイギリスなどで侮辱の意味に、OKサインは一部の国で不適切な意味になることがあります。
宗教施設では特に丁寧なふるまいを
モスク、教会、寺院などの宗教施設に行く機会があるかもしれません。観光目的でも、そこは信仰の場。以下のマナーは最低限おさえておきましょう。
【服装】
- 肌の露出は控える
- 靴を脱ぐ必要がある場所も(モスクや寺院など)
- 帽子・サングラスは外す
【行動】
- 中では静かにする(大声・笑い声・電話はNG)
- 写真撮影は禁止の場所もある。OKの場合でもフラッシュは避けましょう。
- 礼拝中の人の邪魔をしない。通路で立ち止まらないように。
【儀式や礼拝への参加】
- 興味があっても、勝手に参加しないこと。
- 誘われた場合でも、宗教のルールを理解したうえで行動しましょう。
まとめ:宗教を知ることは、相手を思いやること
宗教マナーは完ぺきに覚える必要はありません。しかし、「知らなかった」ことで生まれる誤解やすれ違いは、ちょっとした知識で防ぐことができます。
相手の文化や信仰に配慮する姿勢は「わかろうとしてくれている」と相手に伝わり、信頼関係を築く第一歩になります。宗教を知ることは、その国の文化や価値観を理解するきっかけにもなるでしょう。
違いを知れば戸惑いは減り、共通点にも気づけるようになります。そして、世界を学ぶことは、自分自身の考え方や視野を広げるチャンスにもなるはずです。
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